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旅館のInstagram集客|予約サイト以外の導線

旅館のInstagram集客|予約サイト以外の導線

結論から書きます。旅館のInstagram集客は、OTA(予約サイト)をやめる話ではありません。認知と想起をInstagramが担い、予約の受け皿をOTAと公式サイトの両方に用意するのが現実的です。前提として、公式サイトに予約エンジンがあること、そして館内撮影のルールを決められることの2つが必要です。この2つが無い段階では、投稿本数を増やしても直予約は動きません。

この記事では、宿泊業に固有の論点に絞って書きます。手数料を踏まえた直予約の損益の考え方、客室・料理・風呂の撮影制約、検討期間の長さを前提にした年間カレンダー、プロフィールから公式予約とLINEへつなぐ導線、予約経路の数え方までを扱います。

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OTAとInstagramの役割分担を先に決める

この章の要点

OTAは「比較して選ばれる場所」、Instagramは「候補に入る前に思い出してもらう場所」です。同じ役割を奪い合わせると、どちらの数字も読めなくなります。

宿を探す人の動きは、おおまかに3段階に分かれます。段階ごとに効く媒体が違います。

段階 利用者の状態 主に使う場所 宿側の打ち手
①きっかけ 行き先も日程も未定。「いつか行きたい」 Instagram・TikTok・YouTube リール、保存される投稿、地名タグ
②比較 エリアと日程がほぼ決定。宿を3〜5件に絞る OTA、検索、口コミ プラン整備、写真、クチコミ返信
③予約 どこで取るかを決める OTA/公式サイト 公式の特典、空室の見やすさ

Instagramが最も効くのは①です。ここで「この宿、いいな」と保存された人が、数週間後に宿名で検索します。その検索結果の上位にOTAしか無ければ、予約はOTAに流れます。直予約を増やす作業の大半は、②と③で公式サイトを選択肢に入れてもらうことだと考えてください。

なお市場環境として、観光庁の宿泊旅行統計調査では2025年の延べ宿泊者数は6億6,111万人泊(前年比+0.3%)、うち日本人は4億8,118万人泊(前年比−2.7%)と減っています。一方で外国人は1億7,992万人泊(前年比+9.4%)でした。国内の日本人客が自然に増える前提では計画を立てにくい、という点は押さえておきたいところです。

畳敷きの旅館客室と障子越しの庭の眺め
写真:Francesco Ungaro/Pexels

直予約を1件増やすと手残りはいくら変わるか(仮定に基づく試算)

この章の要点

OTA手数料は契約やプランで変わります。表面の料率ではなく、精算書から逆算した実質負担率で考えます。

国内OTAの販売手数料は、基本料率に加えてポイント原資の負担、事前決済の上乗せ、販促企画への参加費などが乗る構造です。そのため表面の料率と実際の負担がずれやすく、業界各社の解説でも実質負担率で見るべきだと指摘されています。料率は各社の契約条件によって異なるため、まず直近3か月の精算書で「販売総額に対する控除額の合計÷販売総額」を計算してください。これが自館の実質負担率です。

以下は、その実質負担率を13%と仮定した場合の試算です。実在の宿のデータではなく、判断の型を示すための仮定に基づく試算です。

項目 OTA経由 公式サイト直予約
宿泊単価(2名1泊・税込) 30,000円 30,000円
販売手数料(仮に13%) −3,900円 0円
カード決済手数料(仮に3.4%) OTA手数料に内包と仮定 −1,020円
直予約特典(例:ワンドリンク+レイトアウト)の原価 — −800円
手残り 26,100円 28,180円
差額 1件あたり +2,080円

この条件なら、月に10件を直予約に振り替えると月20,800円、年間で約25万円の差です。つまりInstagram運用や撮影にかける費用は、この差額で回収できる水準かどうかで判断できます。逆に言えば、月数件の振り替えしか見込めない規模なら、大きな投資は合いません。

見落としやすい点

直予約には、OTAが代行していた業務が戻ってきます。問い合わせ対応、決済トラブル、キャンセル処理、多言語対応などです。手数料の差額から、この人件費を引いて考えてください。差額が小さい宿では、OTAに任せたほうが総コストは低い場合もあります。

OTA併用を前提にした価格と特典の設計

この章の要点

公式サイトだけ価格を下げる前に、OTAとの契約条項を確認します。価格で差をつけられない場合は、価格以外の条件で差をつけます。

OTAとの契約には、料金や在庫の提示条件に関する取り決めが含まれていることがあります。公式サイトの価格を下げる判断をする前に、契約書の該当条項と担当者への確認を済ませてください。ここを確認せずに動くと、掲載条件の変更や順位への影響という形で跳ね返る可能性があります。

価格を同額に保ったまま直予約の理由をつくる方法としては、次のような設計が考えられます。いずれも原価と手間を事前に見積もってから採用してください。

  • チェックアウト時刻の延長(清掃シフトに余裕がある日のみ)
  • 公式限定の部屋タイプ・離れ・特別室をOTAに出さない
  • 連泊時の夕食メニュー変更や、2泊目の献立を変える対応
  • 駅・空港からの送迎枠を公式予約者に優先確保
  • 次回利用時に使える宿泊券(有効期限と除外日を明記)
  • 記念日利用のケーキ・装花の手配をフォームで受ける

特典は数を増やすほど現場の負担が増えます。最初は1つか2つに絞り、繁忙日は適用外と明記するのが運用しやすい形です。適用条件(対象プラン・除外日・人数)は、投稿ではなく公式サイトの予約ページに正式な表記を置き、投稿からはそこへ送ります。

客室・料理・風呂・周辺観光の投稿の型と、撮影の制約

この章の要点

宿の撮影は「撮れる時間」が限られます。撮影枠を業務シフトに組み込むところから始めます。

旅館の館内は、他のお客様が滞在している時間帯には撮影できません。現実的に撮れるのは、清掃完了後からチェックイン前の時間、浴場の清掃・入替の時間、そして仕込み中の調理場です。ここを押さえずに企画だけ立てても続きません。

そのまま使える投稿企画6案

  1. 客室に入る60秒
    玄関で靴を脱ぐところから、襖を開け、窓の景色に寄るまでを一続きで撮ります。間取り図より、歩いた順路のほうが広さが伝わります。
  2. 配膳の瞬間
    完成した料理の静止画より、蓋を開ける・鍋に火が入る・最後の一手間が入る数秒が保存されやすい素材です。献立名は本文に文字で書きます。
  3. 湯の音
    浴場は営業時間外に撮影します。人物を入れず、湯の流れる音と湯気、窓外の景色で構成します。貸切風呂がある場合は、予約方法と料金を本文に書きます。
  4. 宿から◯分の過ごし方
    周辺の立ち寄り先を、宿からの移動時間つきで紹介します。「2日目の朝、何をするか」が埋まると、1泊の価値が上がります。
  5. よくある質問への回答
    子連れの可否、アレルギー対応、送迎の有無、部屋食かどうか。問い合わせで多い順に1本ずつ作ります。検討中の人が最後に確認する項目です。
  6. 働く人の1日
    仲居、板場、フロントの動きを短く。採用にも使える素材になり、二次利用が効きます。
撮影前に決めておくこと

①他のお客様が写り込まない時間帯と動線、②従業員が出演する際の同意の取り方と、退職後の掲載をどうするかの取り決め、③館内でお客様を撮影する場合の声かけ文言と、掲載範囲の確認方法。この3点を文書にしておくと、担当者が替わったときの判断のばらつきを減らせます。

撮影と編集の負荷が読めない場合は、繁忙期前に施設・客室・料理の動画制作を含む支援内容を確認したうえで、撮りためる分だけ外部に任せる方法もあります。

湯気の立つ旅館の露天風呂と木の湯船
写真:Satoshi Hirayama/Pexels

プロフィールから公式予約・LINEへつなぐ導線

この章の要点

Instagramのプロフィールには外部リンクを最大5件まで登録できます。並べる数を増やすより、行き先の優先順位を決めることが先です。

宿の検討期間は長く、見た当日に予約する人は多くありません。そのため、「今すぐ予約」と「後で思い出す」の2本を用意する設計が向いています。

リンクの位置 行き先 役割
プロフィール1本目 公式サイトの予約カレンダー 日程が決まっている人を直行させる
プロフィール2本目 LINE公式アカウント 日程未定の人を受け止める
プロフィール3本目 アクセス・送迎の案内ページ 遠方客の最大の不安を先に解く
ハイライト 客室/食事/風呂/アクセス/よくある質問 プロフィール訪問者の下調べ用
ストーリーズ リンクスタンプで直近の空室日 直前需要の受け皿

LINEを2本目に置く理由は、宿は「次の連休はいつ空いているか」を尋ねたい人が多いためです。DMだけで受けると、返信履歴が担当者個人に埋もれます。LINEなら、空室情報や紅葉の色づき具合を後から配信でき、リピート予約の導線にもなります。配信は週1回を上限の目安にし、配信内容は販促カレンダーの組み方と合わせて決めると重複を避けられます。

自己紹介欄には、所在地(市町村名まで)、最寄り駅からの所要時間、送迎の有無、全室数または客室タイプ、予約の受付方法を入れます。宿名だけでは、県外の人は距離感をつかめません。

繁忙期から逆算する年間カレンダー

この章の要点

投稿を見た日と泊まる日の間には、数週間から数か月の開きがあります。売りたい日から逆算して投稿時期を置きます。

以下は、国内の家族旅行・記念日旅行を主な客層と想定した企画例です。自館の予約リードタイム(予約日から宿泊日までの平均日数)を予約システムで確認し、その日数に合わせてずらしてください。

売りたい時期 投稿を始める時期 主な内容
年末年始 9〜10月 おせち・正月の設え、満室になる日の告知
春休み・ゴールデンウィーク 1〜3月 子連れ対応、連泊の過ごし方、周辺の桜
夏休み 5〜6月 川遊び・花火・涼しさの伝わる映像
紅葉シーズン 8〜9月 昨年の色づきの記録、見頃の目安、混雑日
閑散期(平日・1〜2月など) 直前2〜4週間 平日限定の過ごし方、貸切風呂、空室のストーリーズ告知

繁忙期は現場が撮影に時間を割けません。そこで、繁忙期は「撮る時期」、閑散期は「出す時期」と割り切ります。紅葉の最盛期に撮った素材は、翌年の8月に使います。季節の素材は1年単位で効くため、撮影日とシーンを台帳に残しておくと、翌年の制作費を抑えられます。

予約経路をどう数えるか

この章の要点

Instagram単体の数字ではなく、「保存→プロフィールアクセス→リンククリック→公式予約」の4段階で、どこが細いかを見ます。

宿の場合、投稿を見てからOTAで予約する人が一定数います。この分はInstagramの画面上では計測できません。そのため、計測できる範囲と、推定で補う範囲を分けて扱います。

見る数字 確認場所 細いときに疑うこと
保存数・リーチ Instagramインサイト 企画が「宿の紹介」で終わっていないか
プロフィールアクセス Instagramインサイト 投稿の1枚目・冒頭に宿名と地名が無い
リンククリック Instagramインサイト リンク先の文言が「公式サイト」だけで用途が不明
公式サイトの予約数 予約エンジンの管理画面+アクセス解析 予約カレンダーまでの階層が深い
指名検索数 検索エンジンの管理ツール 認知の施策がそもそも届いていない

計測を補う実務として、チェックイン時の宿泊カードに「当館を知ったきっかけ」の欄を設け、SNSの項目を用意する方法があります。OTA経由で予約した人のうち、どれだけがSNSで知ったかを把握できます。プロフィールのリンクにはパラメータを付け、アクセス解析側でSNS流入の予約を分けられるようにしておきます。

どの段階で落ちているかの切り分け手順は、業種を問わず共通です。飲食店の来店計測の考え方も、予約の数え方の部分は参考になります。

内製と外注をどこで分けるか

宿泊施設では、現場の人が撮れる素材と、外部でないと撮れない素材がはっきり分かれます。分け方の目安は次のとおりです。

作業 向いている担当 理由
日々のストーリーズ(天気、空室、花の開花) 現場スタッフ 即時性が価値。外注では間に合わない
客室・料理・浴場の主力映像 外部の撮影 照明と画質が宿の単価の印象を左右する
年間の企画設計と投稿カレンダー 外部+支配人 販売計画と連動させる必要がある
コメント・DMの返信 現場スタッフ 空室や料理の正確な回答が必要
数値の集計と改善提案 外部 月次で継続する作業。現場では止まりやすい

最初から全部を内製しようとすると、繁忙期に止まります。逆に全部を外注すると、現場の空気が伝わる素材が無くなります。主力素材は外部、日常はスタッフという形から始め、スタッフが撮影に慣れてきた範囲を順に内製へ移すのが現実的です。

株式会社友竹ホールディングスでは、Instagram・TikTokの運用代行に加え、スタッフが日常的に撮影・投稿できる体制をつくる内製化支援(SODATSU)を行っています。繁忙期の撮影だけを依頼し、閑散期の投稿は自館で回すといった切り分けの相談も可能です。進め方の検討材料としてはInstagram運用代行のサービス内容やこれまでの実績・事例をご覧ください。自館の予約リードタイムや客室数を踏まえた進め方を相談したい場合は、お問い合わせフォームからご連絡ください(受付は平日10:00〜19:00です)。

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