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社員が登場する採用動画の作り方|出演の同意と撮り方

社員が登場する採用動画の作り方|出演の同意と撮り方

社員が出る採用動画でつまずきやすいのは、撮影技術ではなく出演の合意形成です。先に決めるのは用途・媒体・公開期間・退職後の扱い・二次利用の5つで、これを書面にしてから撮影日を押さえます。この記事は、採用担当者が自社だけで進められるように、同意書の記載項目、断る社員への代替案、台本に頼らない質問設計、当日の進行表、退職時の削除対応までを順に整理します。法令の最終的な判断は自社の顧問弁護士に確認してください。

この記事の前提

対象は、自社の採用目的でInstagram・TikTok・YouTube・採用サイトに載せる60秒前後の社員出演動画です。タレントや外部モデルの起用、広告素材としての大規模配信は条件が変わるため、別途契約条件の確認が必要です。

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撮影日を決める前に、出演条件5項目を文章にする

社員に声をかける前に、会社側で条件を固めます。条件が曖昧なまま「ちょっと出てくれない?」と頼むと、後から公開範囲の認識違いが起きます。

  • 用途:採用広報に限るのか、サービス紹介や営業資料にも使うのか
  • 媒体:自社アカウント限定か、求人媒体・会社説明会・広告配信まで含むか
  • 期間:公開期限を設けるか、期限なしで本人の申し出があれば対応するか
  • 退職・異動後の扱い:退職時に自動で非公開にするか、申し出ベースか
  • 二次利用:1本の素材を切り出して別媒体に再編集してよいか

5項目のうち、もっとも意見が割れるのは退職後の扱いです。「退職の申し出から公開停止までの日数」を先に決めておくと、実際に退職者が出たときに人事と運用担当が迷いません。たとえば「退職日から10営業日以内に自社アカウントの該当投稿を非公開化する」といった形で、担当部署と期限をセットで書きます。

出演同意書に入れる項目と、1枚にまとめる書き方

同意書は長文の契約書である必要はありません。本人が読んで内容を理解できる1枚にして、原本は人事、写しは本人が持つ形が運用しやすいです。下表は、項目と、書き漏らしたときに起きやすい問題を並べたものです(当社が実務で起きやすいと考える整理であり、法的助言ではありません)。

記載項目 書く内容の例 抜けると起きやすいこと
利用目的 採用広報(自社の人材募集)に関する情報発信 営業資料に転用され「聞いていない」となる
掲載媒体 自社Instagram・TikTok・YouTube・採用サイト・会社説明会資料 求人媒体への転載可否で揉める
公開期間 公開日から2年間。延長時は再度確認 何年も前の動画が残り続ける
氏名・所属の表示 下の名前のみ/フルネーム/部署名の表示可否 本人が想定しない特定につながる
編集・二次利用 尺の調整、字幕追加、切り出しての再投稿の可否 切り抜きの印象が変わり本人が不快に感じる
広告配信の可否 有償の広告素材として配信するか 投稿と広告を同じ扱いにしてしまう
退職・異動後の扱い 退職日から◯営業日以内に非公開化/申し出があれば対応 退職者の顔が採用動画に残る
取り下げの申し出 申し出先の部署と連絡方法、対応の目安期間 誰に言えばよいか分からず放置される
拡散した場合の限界 第三者による保存・転載は完全には回収できない旨 「全部消えると思っていた」という認識違い
署名日・本人署名 撮影日より前の日付で取得 撮影後に同意を取る形になる
見落としやすい点

いったん公開した動画は、第三者が保存・転載している可能性があり、削除しても完全な回収はできません。同意書にその旨を書き、説明の場でも口頭で伝えておくと、後の期待値のずれを減らせます。「消せば元に戻る」という前提で説明しないことが大切です。

会議室でインタビュー撮影の準備をする様子
写真:cottonbro studio/Pexels

肖像権と個人情報の扱いで、最低限押さえる前提

社員の顔が映る動画には、人格的利益と個人情報の2つの観点があります。

最高裁平成17年11月10日判決は、人はみだりに自己の容ぼう等を撮影されない点で法律上保護されるべき人格的利益を有するとし、違法かどうかは撮影の目的・場所・態様・必要性などを総合考慮して受忍限度を超えるかで判断するとしています。出発点とされるのは、昭和44年12月24日の最高裁大法廷判決です。つまり、撮影も公開も本人の承諾を前提に進めるのが基本線になります。

個人情報保護委員会の資料では、誰なのか分かる程度に顔が鮮明に映った画像を取得した場合、個人情報を取り扱うことになると説明されています。また同委員会のFAQでは、社内行事の写真を社内で展示する場面について、本人を判別できる写真は個人情報に当たるものの個人データではないと解されるため第三者提供に関する規定違反のおそれはないとしつつ、利用目的の通知または公表は必要と示されています。社外公開を伴う採用動画では、利用目的をあらかじめ本人に示す運用にしておくのが無難です。

なお、健康状態や信条など要配慮個人情報に触れる話題は、インタビューで引き出さない設計にします。育休・治療・家族の事情などを本人が自発的に語った場合も、公開可否をその場で確認してから使うと判断の取りこぼしを防げます。

出演者の選び方と、断る社員への代替案

人選の基準を「話がうまい人」に置くと、候補が数人に偏ります。採用動画で見られているのは話術ではなく、応募者が自分を重ねられるかどうかです。

  1. 募集職種と近い属性から選ぶ
    新卒向けなら入社1〜3年目、中途向けなら同業からの転職者など、応募者の立場に近い人を優先します。
  2. 現場の一次情報を持つ人を入れる
    役員だけでなく、日々の業務を具体的に語れる人を1名以上入れると内容が具体になります。
  3. 声かけは上長経由にしない
    直属の上長から依頼すると断りにくくなります。人事から直接依頼し、断っても評価に影響しないことを明記します。
  4. 検討期間を置く
    その場で返事を求めず、同意書の写しを渡して数日考えてもらいます。

断られたときに用意しておく代替案

出演は任意です。断る理由は、SNSに顔を出したくない、前職の関係者に見られたくない、身元特定を避けたいなど様々で、理由を詮索しないのが前提です。代わりの見せ方を先に用意しておくと、企画を止めずに済みます。

  • 手元・後ろ姿・横顔など、顔を映さない構図で作業を見せる
  • 声のみ出演(ナレーション)+テロップと現場映像で構成する
  • 匿名コメントを字幕で紹介し、話し手は別の出演者が担当する
  • 社内向け限定公開にとどめ、説明会の場だけで上映する

台本を作らずに本音を引き出す質問設計

一語一句の台本を渡すと、読み上げ口調になり、応募者に伝わりにくくなります。渡すのは質問リストだけにして、答えは当日の言葉に任せる進め方が現実的です。質問は、抽象的な感想ではなく出来事を聞く形に変えます。以下は当社で作成した企画例です。そのまま使えます。

避けたい質問 言い換えた質問 狙い
当社の魅力を教えてください 入社を決めたとき、最後に決め手になったのは何でしたか 比較検討の実態が出る
職場の雰囲気はどうですか 直近1週間で、誰かに助けられた場面はありましたか 関係性が具体的に描ける
やりがいは何ですか この1か月で、終わったときに声が出たくらい嬉しかった仕事は 感情と事実が結びつく
大変なことはありますか 入社前の想像と違っていたことを1つ挙げるなら ギャップを正面から扱える
どんな人に来てほしいですか この仕事を楽しめないのはどんなタイプだと思いますか ミスマッチの事前共有になる
1日の流れを教えてください 今日の出社から今までで、何をしていましたか その日の実務が語れる

撮影前日に質問リストを共有し、当日は「答えを覚えてこないでください」と伝えます。詰まったら言い直してよいこと、同じ質問を角度を変えて何度か聞くことも先に説明しておくと、本人の緊張が下がります。

見落としやすい点

ネガティブな話を一切カットすると、採用動画の説得力は落ちます。一方で、特定の人物や取引先が推測できる不満は使えません。編集前に「困った点」の扱い方を本人と決め、どこまで出すかを本人確認の段階で合意しておきます。

撮影当日の進行と所要時間の組み方

以下は、出演者3名・各自60秒前後の縦型動画を3本つくる場合の進行例です。実際の所要時間は人数・場所・機材で変わるため、仮定に基づく試算として参照してください。

時間 内容 社内調整で必要なこと
9:30〜10:00 機材設営・画角と音の確認 会議室を撮影の30分前から押さえる
10:00〜10:15 同意書の最終確認・当日の流れ説明 人事が同席し、質問に答える
10:15〜11:00 1人目インタビュー(実尺45分) 本人の業務を前後1時間空ける
11:00〜12:30 2人目・3人目インタビュー 控え時間を各15分とる
13:30〜15:00 作業風景・オフィスのカット撮影 映り込む他部署へ事前周知する
15:00〜15:30 撮り漏れ確認・素材の持ち出し手順確認 データの保管場所と権限を決める

インタビューは、1本60秒の動画に対して30〜45分の収録を見込むと余裕が出ます。短く済ませようとすると、使える言葉が集まらず、後日の撮り直しで工数が増えます。

社内調整で先に連絡しておくこと

  • 撮影日時と場所を全社に周知し、映り込みを避けたい人が申し出られるようにする
  • 顧客情報が写るホワイトボード・モニター・書類を片付ける担当を決める
  • 来客や電話の集中する時間帯を外す
  • 撮影データの保存先と、アクセスできる人の範囲を決める(外部に渡す場合は受け渡し方法も)
カメラに向かって話す社員とスタッフの撮影現場
写真:cottonbro studio/Pexels

退職・異動が起きたときの削除対応の決め方

退職そのものを理由に、法律上当然に削除義務が生じるとまでは言えません。だからこそ、社内ルールとして手順を決めておくことが実務上の分かれ目になります。

  1. 退職手続のチェック項目に「出演動画の有無」を入れる
    人事の退職フローに1行追加するだけで、取りこぼしが減ります。
  2. 出演者と投稿URLの一覧を持つ
    氏名・撮影日・投稿先URL・同意書の保管場所を1つの表で管理します。
  3. 非公開化の範囲を決める
    自社アカウントの投稿、採用サイト、説明会資料、広告素材のどこまで止めるかを定義します。
  4. 対応期限と担当を書く
    「人事が運用担当に依頼し、◯営業日以内に非公開化」まで決めて初めて動きます。
  5. 本人へ結果を連絡する
    対応した範囲と、外部転載は回収できない点を併せて伝えます。

異動の場合は、肩書きや部署名のテロップが実態と合わなくなります。テロップを撮影年の表記(例:2026年撮影時点)にしておくと、異動のたびに作り直す必要がなくなります。

内製と外注、どこで線を引くか

同意と人選は社内の人間関係が関わるため、外部に任せきれません。一方で、進行と編集は外に出しても品質が保ちやすい領域です。判断材料として、役割の分け方を整理します。

工程 内製が向く 外注が向く
出演依頼・同意取得 ○(人事が直接行う) △(説明資料の作成支援まで)
質問設計 ○(現場を知る人が入る) ○(聞き出す設計は外部が得意な場合も)
当日の進行・インタビュー △(身内だと話が硬くなることがある) ○(第三者のほうが話しやすい人もいる)
撮影・編集 △(本数が多いと負荷が高い) ○
投稿運用・コメント対応 ○(社内の一次情報で返せる) ○(運用設計を伴う場合)

最初の数本を外部と一緒に作り、質問リストと進行表を自社に残してから内製へ移す進め方もあります。当社は、Instagram・TikTokの運用代行に加えて、社内で回す体制をつくる内製化支援(SODATSU)も行っています。進め方の相談先を探している場合は、TikTok運用代行のサービス内容やInstagram運用代行のサービス内容をご覧ください。支援の範囲全体は事業内容のページにまとめています。

「社員に出てもらう動画を作りたいが、同意の取り方や撮影の進行に不安がある」という段階でも相談いただけます。受付は平日10:00〜19:00(土日祝・年末年始を除く)です。お問い合わせフォームから、現在の体制と公開したい媒体をお知らせください。

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