
結論から書きます。展示会に出すSNSは、常時運用とは別に「会期を山にした約3か月の企画」として組み直すと動かしやすくなります。会期前は来場の約束づくり、会期中は素材の確保、会期後は名刺フォローと再接触。役割を時期で分けると、現場で「これは投稿していいのか」と迷う時間が減ります。
前提として、本記事は国内のBtoB展示会に出展するメーカーで、目的が名刺獲得と商談化である場合を想定しています。一般消費者向けの拡散狙いや、展示会に出展しない企業の常時運用は対象外です。数値の例はすべて筆者が条件を置いた企画例・試算で、特定企業の実績ではありません。
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展示会前・中・後でSNSの役割を分ける
SNSは展示会の集客装置であると同時に、会期中しか撮れない素材の収穫装置でもあります。1アカウントで3つの役割を順番に回すと考えると設計が崩れません。
多くのメーカーで起きがちなのは、会期直前の告知だけSNSを使い、会期後は更新が止まることです。名刺は集まったのに、検討期間が長い商材ほど接触が途切れます。時期で役割を分けると、次の表のようになります。
| 時期 | SNSの役割 | 主な投稿 | 主に見る指標 |
|---|---|---|---|
| 3か月前〜1か月前 | 課題の言語化・出展の周知 | 来場者が抱える課題、解決の考え方、出展告知 | リーチ、保存、プロフィール閲覧 |
| 2週間前〜前日 | 来場の約束づくり | ブース番号、見どころ、デモ時間、搬入の様子 | リンククリック、DM・返信数 |
| 会期中 | 素材の確保と当日の呼び込み | ブースの実演、来場状況、登壇の告知 | ストーリーズの閲覧・リンク遷移 |
| 会期後1〜2週間 | お礼と接触の維持 | 振り返り、Q&A、デモ動画の本編 | 資料請求、問い合わせ件数 |
| 会期後1〜3か月 | 二次利用による継続発信 | 会期中素材を切り出した縦型動画 | 指名検索、再訪・再商談 |
重要なのは、会期中の撮影が会期後3か月分の投稿原資になる点です。会期中を「撮影日」として扱えるかどうかで、その後の発信量が変わります。
3か月前から前日まで:来場の約束を取りにいく発信
この時期の目的は、フォロワーを増やすことではありません。「このブースに行く理由」を事前に作ることです。製品名を連呼する告知より、来場者が普段困っていることから入る方が読まれやすくなります。
そのまま使える投稿企画例(7本)
- 現場でよく聞かれる質問を1つ取り上げ、回答を図解で示す
- 自社製品が解決する課題を、業界の作業工程に沿って説明する
- 開発担当が語る「この仕様にした理由」を60秒前後で話す
- 出展の告知(展示会名・会期・小間番号・何が見られるか)
- ブースでのデモ内容と実施時間の案内
- 搬入・設営の様子(通路や他社の造作が映らない角度で)
- 会期前日の「当日の回り方」案内(最寄り出入口、所要時間の目安)
既存の接点がある相手への案内文の型
名刺交換済みの相手にSNSのDMやメールで案内する場合、長文は読まれにくいです。以下の4要素に絞ると短くまとまります。面識のない相手への一斉送付は、相手の受け取り方次第で評判を損ねるため、既存接点のある相手に限る運用をおすすめします。
- いつどこか
展示会名、会期、小間番号を冒頭に置きます。 - 相手に関係する一文
前回の商談や、相手の工程に関わる話題を1文だけ入れます。 - 見せるもの
実機か、デモか、資料かを明示します。所要時間の目安も添えます。 - 返事のしやすい締め
「ご都合の良い日時があればお知らせください」など、選択肢を1つに絞ります。

会期中:誰が何を撮るかを決めてから会場に入る
会期中は接客が最優先です。撮影の判断を当日その場でやろうとすると、だいたい撮り逃します。役割と撮るカットを事前に紙1枚で決めておくのが現実的です。
撮影の分担例
| 担当 | 役割 | 目安 |
|---|---|---|
| 営業・接客担当 | 撮影しない。来場者対応に専念 | ― |
| 撮影担当(社内1名) | スマホでストーリーズ用の短尺とメモ撮り | 1日10〜15カット |
| 撮影担当(外部) | 実演・インタビューなど、後で使う本番素材 | 会期中1〜2日 |
| 投稿担当(社内・会場外可) | 送られた素材を確認し、当日中に投稿 | 1日2〜3本 |
会期中に押さえておきたいカット
- 実機が動いている様子(音が出るものは音も録る)
- 説明している担当者の表情が分かる寄りのカット
- 来場者が実機に触れている手元(顔が映らない角度)
- サイズ感が伝わる引きのカット(人と並べる)
- 担当者が1分で製品を説明する一人語り(会場が静かな時間帯に)
- よく聞かれた質問とその回答(音声メモでも可)
最後の「よく聞かれた質問」は、会期後のコンテンツとして使い道が広いものです。1日の終わりに5分だけ、その日に聞かれた質問をメモに残す運用を決めておくと、会期後の企画出しが楽になります。
会期後:素材の二次利用と名刺フォローを並行で回す
会期後にやることは2つです。名刺リストへの個別フォローと、会期中素材を使った継続発信。前者は営業、後者はマーケティングの担当になりますが、同じ時期に動かす必要があります。
二次利用の試算(仮定に基づく試算)
以下は筆者が条件を置いた試算で、実績ではありません。会期3日で、実演カット20点・インタビュー3本・質問メモ15件を確保できたと仮定します。
| 用途 | 想定本数 | 1本の想定尺 | 配信の考え方 |
|---|---|---|---|
| 質問回答の縦型動画 | 8本 | 30〜60秒 | 週2本で4週間分 |
| 実演の切り出し | 4本 | 15〜30秒 | 認知目的。音ありを前提に作る |
| 担当者インタビュー | 3本 | 60〜90秒 | 採用・企業理解の文脈にも転用 |
| 横長の製品紹介 | 1本 | 3〜5分 | 商談・自社サイト・展示会の次回出展で再利用 |
この仮定だと、会期3日の撮影で約2か月分の投稿原資が生まれます。縦型と横長の使い分けや、1本の素材を複数媒体に展開する手順は、既存の考え方と合わせて設計すると無駄が減ります。
名刺フォローの導線設計
SNSは「商談の代わり」ではなく「検討期間中に忘れられないための接触」と位置づけると役割が明確になります。会期後の流れの例です。
- 会期終了から3営業日以内にお礼メール
ブースで話した内容に触れ、該当する資料のリンクを1つだけ添えます。 - 同じメール内に自社アカウントの案内を1行
「デモの続きは動画で公開しています」など、見る理由を書きます。 - 2週間以内に会期の振り返り投稿
来場できなかった相手にも、ブースの中身が伝わる内容にします。 - 1か月後に質問回答シリーズを開始
会期中に実際に聞かれた質問から順に出します。 - 3か月後に反応を確認
投稿に反応した企業が商談リストにいるかを営業側と突き合わせます。
名刺に記載したQRの遷移先を、SNSアカウントだけにしないことをおすすめします。会場で読み取る人は情報を持ち帰りたいので、資料ダウンロードや製品ページを一次の遷移先に置き、SNSは二次の接点として案内する構成の方が、後から経路をたどりやすくなります。遷移先ごとにURLを分けておくと、どの導線から問い合わせが来たかを判別する手順も決めやすくなります。
メーカー固有の制約:顔出しと守秘情報の線引き
BtoBメーカーの撮影で止まりやすいのが、人と情報の扱いです。会期が始まってから社内調整をすると間に合いません。出展申込みの時点で、撮影ルールを1枚にまとめておく進め方が現実的です。
撮影前に決めておく項目
- 顔出し可の社員と不可の社員を名簿で区別する
- 顔出し不可の場合の代替(手元・後ろ姿・音声のみ)を決める
- 掲載期間と、退職時の取り下げ手順を本人に説明する
- 映してよい図面・型番・制御画面の範囲を技術部門と確認する
- 取引先名が映る展示物・パネルの扱いを決める
- 他社ブースや来場者が映り込んだ場合の処理を決める
- 主催者の撮影規定(会場内撮影の可否、申請の要否)を事前に確認する
特定の取引先向けに製造した部品や、開発中の仕様が映る素材は、公開前に技術部門の確認を通す流れを作ると、後からの削除依頼を減らせます。確認者を1名に固定し、投稿前日までに回す締切を決めておくと、運用が止まりにくくなります。
来場者の映り込みは、引きの画で顔が判別できない角度を基本にし、寄りで撮る場合はその場で一声かける運用が扱いやすいです。断られた場合に撮り直せるよう、代替カットを先に押さえておくと当日の負担が軽くなります。

どの指標で判断するか
展示会と絡めるときは、フォロワー数より「来場の約束」と「会期後の再接触」に関わる指標を優先します。時期ごとに見る指標を変えるのが実務的です。
| 時期 | 見る指標 | 判断の目安 |
|---|---|---|
| 会期前 | 告知投稿のリンククリック、DM・返信件数 | 反応が少ない場合、投稿内容より「来る理由」の弱さを疑う |
| 会期前 | 来場予約・アポ確定件数 | SNS経由かメール経由かを分けて記録する |
| 会期中 | ブースで「SNSを見た」と言われた件数 | 接客メモに1項目追加するだけで把握できる |
| 会期後 | 資料ダウンロード・問い合わせ件数 | 会期前4週間と会期後4週間を比べる |
| 会期後 | 投稿に反応した企業と商談リストの重なり | 月1回、営業と突き合わせる |
注意したいのは、会期前後のリーチの増減だけで良し悪しを決めないことです。展示会の時期は業界全体の関心が上がるため、数字は動きやすくなります。商談につながったかどうかを軸に、四半期単位で見る方が判断を誤りにくくなります。指標の置き方そのものに迷う場合は、売上から逆算して先に目標を定めてから、SNS側の指標を選ぶ順番をおすすめします。
内製と外注の分担ライン
全部を社内でやろうとすると会期中に破綻し、全部を外注すると現場の言葉が薄くなります。素材の「鮮度」が要るものは社内、編集と設計は外部という分け方が一つの基準です。
| 作業 | 向いている担当 | 理由 |
|---|---|---|
| 会期前の企画・投稿カレンダー | 外部と共同 | 展示会のスケジュールと社内承認の両方を踏まえる必要がある |
| 会期中のストーリーズ投稿 | 社内 | 即時性が価値。きれいさより早さが優先 |
| 実演・インタビューの撮影 | 外部 | 会場の音と光の条件が難しく、撮り直しが利かない |
| 縦型への編集・二次利用 | 外部(将来は社内) | 型が決まるまでは外部、型ができたら社内へ移す |
| 技術・守秘のチェック | 社内 | 判断の責任を外に出せない領域 |
| 会期後の継続発信 | 社内 | 質問の一次情報が社内にあるため |
初回の出展では外部の比率を高くし、2回目以降で社内に移す範囲を広げる進め方が無理のない順番です。移管する際は、撮影リスト・編集の型・確認フローの3点を文書で引き継ぐと、担当者が変わっても運用を止めずに済みます。
株式会社友竹ホールディングスは、Instagram・TikTokの運用代行と、社内で運用を回せるようにする内製化支援(SODATSU)を行っています。展示会映像の撮影と縦型への二次利用、会期後の継続発信を社内で回す体制づくりまで、どこを任せてどこを残すかの相談を承っています。サービスの範囲は事業内容のページ、媒体別の進め方はInstagram運用代行とTikTok運用代行をご覧ください。支援の進め方をまとめた資料は資料ダウンロードから入手できます。出展時期が決まっている場合は、会期から逆算した分担の相談をお問い合わせフォームよりお寄せください。受付は平日10:00〜19:00です。
