
自動車販売店がSNS動画で来店や試乗予約を増やすなら、やることは3つです。在庫車1台を1本の縦型動画にする撮影型を決める、プロフィールから試乗・来店予約とLINE見積りへ一直線に並べる、来店時に「SNSを見たか」を記録する。この順で整えます。
前提として、車は高額で検討期間が長い商材です。動画を見たその日に来店する人は多くありません。だから「投稿で売る」のではなく、来店予約と追客リストを増やす設計にします。価格を出す場合は、2023年10月1日施行の自動車公正競争規約の改正により、中古車は支払総額と内訳の表示が必要です。ここは後半で整理します。
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まず決めること:動画の役割は「在庫紹介」ではなく「来店理由づくり」
在庫情報そのものは、すでに大手の中古車情報サイトに並んでいます。同じ情報を動画にしても、比較対象が増えるだけです。SNS動画が担えるのは、サイトの写真では分からない部分です。
- 傷やスレの実物の見え方(写真では分かりにくい)
- 後席にベビーカーやゴルフバッグが入るかの実演
- 整備・仕上げの工程、納車までの流れ
- 対応する担当者の人柄
この4つは、来店の不安を下げる情報です。狙うのは再生数ではなく、「この店なら行ってもいい」と思える状態まで持っていくことです。
動画のゴールは在庫の露出ではなく、来店予約・試乗予約・LINE登録の3つです。投稿本数ではなく、この3つの数で評価します。
在庫車1台=1本の撮影テンプレ(60〜70秒・8カット)
毎回構成を考えると続きません。入庫したら同じ順で撮る型を決めます。以下は当社で作成した企画例です。スマートフォン1台と、三脚、ピンマイクがあれば撮れます。
| 秒数 | カット | 話す・入れる内容 |
|---|---|---|
| 0〜3秒 | フロント斜め前に寄る | 年式・グレード・走行距離・支払総額を1文で |
| 3〜10秒 | 車体を一周(歩き撮り) | ボディカラーの実際の見え方 |
| 10〜20秒 | 運転席に乗り込む主観視点 | 乗り込みやすさ、シート素材 |
| 20〜30秒 | メーター・内装の寄り | 走行距離を画面に映す |
| 30〜40秒 | 後席・荷室で実演 | ベビーカーや段ボールを実際に積む |
| 40〜50秒 | 傷・へこみ・スレを寄りで | 場所と大きさを手で示して説明 |
| 50〜60秒 | 装備の実演 | スライドドア、運転支援の表示など |
| 60〜70秒 | 締めのCTA | 「試乗は◯曜も可能」「在庫確認はプロフィールから」 |
最初の3秒で「何の車がいくらか」を言い切るのが肝心です。ここが曖昧だと、検討層は止まりません。
- 撮る前に紙1枚を用意する
年式・型式・走行距離・修復歴の有無・定期点検整備の有無・支払総額(内訳含む)を書き出します。読み上げ間違いを防げます。 - 車両を定位置に移動する
背景に他社の幟や雑多な荷物が入らない場所を1か所決め、毎回そこで撮ります。画の統一感が出ます。 - 横からの光で撮る
逆光だとボディの色が沈みます。晴天の正午より、午前か夕方が撮りやすい時間帯です。 - 傷は隠さず寄る
来店後に発覚すると商談が止まります。先に見せたほうが、来店後の話が早く進みます。 - 音声は割り切る
展示場は風と車の音が入ります。ピンマイクを使うか、テロップ中心に切り替えます。

売り込まない投稿企画7案(在庫が動いても使い回せる)
在庫紹介だけだと、売れた瞬間に投稿が無価値になります。資産として残る企画を混ぜます。これも企画例です。
- 仕上げ工程:入庫直後と仕上げ後を同じアングルで比較
- 納車の日:引き渡しの流れを工程順に(顧客の同意を得たうえで)
- 見積りの読み方:支払総額の内訳を項目ごとに解説
- 車検・点検の中身:リフトアップして実際に見せる
- 「この予算で何が買えるか」:予算帯別に在庫から3台紹介
- スタッフ紹介:担当者の前職・得意な車種・在籍年数
- よくある質問:ローンの審査の流れ、下取りの査定手順
特に「見積りの読み方」と「仕上げ工程」は、価格への納得感に直結します。問い合わせ前の不安を先に潰す投稿です。
価格を出すときの表示ルール(支払総額・二重価格)
SNS投稿も販売価格を示せば広告表示にあたりえます。社内で線引きを決めておきます。
自動車公正取引協議会は、自動車公正競争規約・同施行規則の改正を2023年10月1日に施行しました。中古車の販売価格は「支払総額」で表示し、内訳として車両価格と諸費用の額を示すことが求められます。協議会の案内では、広告・店頭展示車・注文書など、すべての販売価格が対象とされています。
あわせて押さえたい点です。
- 納車前の車内清掃・洗車・ワックスがけなど、販売にあたり当然行う作業の費用は「諸費用」として請求できず、車両価格に含めて表示します
- 定期点検整備の表示は「定期点検整備付き」「定期点検整備なし」で示します
- 規約違反の措置基準は厳格化され、厳重警告、社名公表、違約金が定められています
二重価格表示にも注意します。消費者庁の価格表示ガイドラインでは、過去の販売価格を比較対照にする場合、「最近相当期間にわたって販売されていた価格」といえるかが判断の軸です。販売実績のない価格を「通常価格」として並べると、有利誤認にあたるおそれがあります。
動画の尺の都合で「◯◯万円!」とだけ言ってしまう事故が起きやすい箇所です。価格を言うカットでは、支払総額である旨と内訳を音声とテロップの両方に入れるルールにしておくと、担当者が替わっても崩れにくくなります。古い在庫動画が残り続ける点も、投稿前に確認する項目に入れてください。
展示場で撮るときの実務ルール
撮影を現場に任せる前に、次の判断を文書で決めておきます。曖昧なまま始めると、後から投稿を削除する手戻りが発生します。
| 対象 | 決めておくこと |
|---|---|
| ナンバープレート・車台番号 | 映すか、ぼかすか。下取り車・顧客の預かり車は原則映さない |
| 来店客の映り込み | 撮影中の立て札を出す。映った場合は公開前に確認して処理する |
| 納車シーンの顧客 | 撮影・公開範囲・削除依頼の窓口を書面で確認してから撮る |
| スタッフ出演 | 退職後の扱いを事前に取り決める。顔出しの可否は個人ごとに記録 |
| 音楽 | 各SNSのアプリ内音源を使うか、商用利用可の音源かを統一 |
出演者や顧客の情報を扱う手順を先に決めておくと、担当交代のときの取りこぼしを防げます。

プロフィールから試乗予約・LINE見積りへの導線
動画が見られても、次の行き先が無ければ来店にはつながりません。車は検討が長いので、「今すぐ来店」と「まだ情報収集」の2本を並べるのが実務的です。
| 検討段階 | 置く導線 | リンク先で最初に見せるもの |
|---|---|---|
| 今すぐ見たい | 来店・試乗予約フォーム | 希望日と希望車種だけの短い入力欄 |
| 価格を知りたい | LINEで見積り・在庫確認 | 支払総額の内訳と、納車までの日数 |
| 情報収集中 | 在庫一覧ページ | 予算帯で絞れる導線 |
| 売却も検討 | 査定の問い合わせ | 査定の流れと所要時間 |
プロフィール文には、店舗名・商圏(最寄り駅やインターからの所要時間)・営業時間・定休日・試乗の可否を入れます。これが無いと、来店の判断ができません。
LINE登録後の追客は、間隔を決めておきます。以下は仮定に基づく運用例です。
- 当日
希望条件のヒアリング1問だけ。質問は1通に1つに絞ります。 - 3日後
条件に近い在庫を2台、支払総額つきで送ります。 - 2週間後
同型車の相場や、新規入庫の案内を送ります。 - 1か月後
車検時期や乗り換え時期を確認し、来店日程の提案に切り替えます。
送る回数より、支払総額と納車時期を毎回明記することが優先です。
週次の運用カレンダーと撮影体制
在庫の入れ替わりに運用を連動させます。入庫日に撮る、が基本です。
| 曜日 | 作業 | 担当の想定 |
|---|---|---|
| 月 | 先週の入庫車をまとめて撮影(1台10分) | 整備・仕上げ担当 |
| 火 | 編集・テロップ入れ、価格表示のチェック | 販促担当+店長確認 |
| 水〜日 | 1日1本投稿、コメント・DM返信 | 販促担当 |
| 金 | 週末の試乗枠をストーリーズで告知 | 販促担当 |
| 月初 | 前月の来店数・予約数の振り返り | 店長 |
撮影を1日にまとめると、5台で約1時間です。編集を別の人が担当すると、現場の負担が偏りません。投稿が止まる店舗の多くは、撮影ではなく編集と確認の工程で詰まります。
来店数の数え方と、見るべき指標
SNS経由の来店は、放っておくと数字が残りません。計測の仕掛けを先に作ります。
- 来店カードに「当店を知ったきっかけ」欄を設け、SNS名まで選べるようにする
- 受付の第一声を「本日のご来店は、どちらでご覧になりましたか」に統一する
- 予約フォームとLINEのリンクに計測用パラメータを付け、流入元を分ける
- 商談記録に、見た動画の車種を書き残す(どの企画が効いたか分かる)
月次で見るのは、再生数ではなく次の4つです。参考として、仮定に基づく試算を置きます。実際の成果を示すものではありません。
| 指標 | 試算の数値 | 置いた仮定 |
|---|---|---|
| 月間再生数 | 40,000回 | 月20本×平均2,000回 |
| プロフィール遷移 | 480回 | 再生の1.2% |
| リンクのタップ | 38回 | 遷移の8% |
| 予約・LINE登録 | 11件 | タップの30% |
| 来店 | 8件 | 予約の約7割が来店 |
この型にすると、落ちている箇所が分かります。再生はあるのに遷移が少なければプロフィール、遷移はあるのにタップが無ければリンク先の中身、という順で手を入れます。来店計測の考え方は、Instagramで店舗集客する方法の記事でも整理しています。
外注と内製、どちらから始めるか
判断材料は、在庫の回転と社内の手です。
| 条件 | 向いている進め方 |
|---|---|
| 月の入庫が多く、撮影できる人が店舗にいる | 内製中心。企画と価格表示チェックの型だけ外部に作ってもらう |
| 店舗の人手が足りず、まず型を作りたい | 撮影・編集を含む運用代行から始め、後で巻き取る |
| 複数店舗で品質をそろえたい | 基準と台本を共通化し、店舗ごとに撮影担当を置く |
株式会社友竹ホールディングスは、Instagram運用代行・TikTok運用代行と、社内で運用を回す体制づくり(SODATSU)を行っています。在庫動画を店舗スタッフで撮り続ける体制を相談したい場合は、事業内容のページをご覧ください。媒体ごとの進め方は、Instagram運用代行とTikTok運用代行のページにまとめています。個別の状況に合わせた相談は、お問い合わせフォームから受け付けています(受付時間は平日10:00〜19:00)。
最後に、今日からできる一歩を1つだけ挙げます。次に入庫した1台を、上の8カットの型で撮ってみてください。型が手に馴染むまでは、企画を増やさないほうが続きます。
