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採用でSNSを始める前に決めること|発信者と公開範囲の線引き

採用でSNSを始める前に決めること|発信者と公開範囲の線引き

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先に決める4つ|誰が出すか、どこまで出すか

採用でSNSを始める前に決めるべきことは、大きく4つです。発信者の型、公開してよい情報の範囲、顔出しの同意と撤回の手続き、退職・異動時の投稿の扱いです。投稿の企画やハッシュタグより先に、この4つを紙1枚に書き出しておくと、運用が始まってからの手戻りが減ります。

前提を置きます。この記事は、従業員数が数名〜数百名の企業が、InstagramやTikTokで自社主導の採用発信を始める場面を想定しています。社員が登場する前提で書いていますので、社員を出さない方針の場合は第2章の比較から読んでください。

この章の要点

採用SNSの事故は、企画の失敗より「誰が出すか」「どこまで出すか」を決めないまま撮り始めたことから起きます。決め事は運用開始前に文書化し、担当者が替わっても参照できる場所に置きます。

  • 発信者は会社アカウント中心か、社員出演か、社員の個人アカウントか
  • 公開してよい情報と出さない情報の線をどこで引くか
  • 顔出しの同意は誰から、どの範囲で、どう撤回できるようにするか
  • 退職・異動が起きたとき、過去の投稿をどう扱うか

発信者の3類型を比べる|会社アカ・社員出演・個人アカ

発信者は3つに分かれます。どれが優れているかではなく、人が辞めたときに何が残るかで選ぶのが実務的です。

項目 ①会社アカウント中心(社員は顔を出さない) ②会社アカウントに社員が出演 ③社員の個人アカウントで発信
アカウントの所有 会社 会社 本人(会社は所有しない)
立ち上げの手間 小さい。同意取得が不要な素材で始められる 中程度。出演者の選定と同意が必要 小さいが、ルールと本人の意思確認に時間がかかる
応募者に伝わるもの 事業内容・制度・職場環境 働く人の雰囲気、上司や同僚の人柄 個人の視点。等身大に見えやすい
退職・異動時の手当て ほぼ不要 投稿の棚卸しと削除可否の判断が必要 会社に削除権限がない。事前の取り決めが前提
炎上時の切り分け 会社として対応しやすい 出演者個人に矛先が向くことがある 個人と会社の責任範囲が曖昧になりやすい
向く場面 求人情報や制度の発信、BtoBや有資格者採用 現場職・若手採用、職場の空気を見せたいとき 専門職の採用、本人が既に発信習慣を持つとき
向かない条件 職場の雰囲気が差別化要因のとき 出演を断りにくい空気が社内にあるとき 発信を業務として管理・評価できないとき

最初は①で始め、運用が安定してから②に広げる進め方が、決め事の少ない順になります。③は会社の指示が及ばない領域が残るため、最後に検討する順序が扱いやすいです。費用の配分を含めて設計したい場合は、採用にSNSを使うときの費用と求人媒体の比較も合わせて確認してください。

会議室でホワイトボードを前に運用ルールを話し合う社員たち
写真:Tima Miroshnichenko/Pexels

公開してよい情報と、出さない情報の一覧

公開範囲は「社外の人が見て困る人がいるか」で切ります。判断を個人の感覚に委ねないよう、具体例で一覧にします。以下は自社でルールを作るときのたたき台です。自社の業種に合わせて追加・削除してください。

区分 具体例 判断の目安
出してよい 仕事内容、1日の流れ、研修や勉強会、社内イベント、オフィスの共用部、評価制度や休暇制度の考え方 会社が説明責任を持てる範囲。求人ページの記載と矛盾しないか
条件付きで出す 社員の顔・氏名・入社年、取引先名や導入事例、現場での作業風景、来客のある場所 本人・相手先の同意が取れているか。写り込みの第三者を確認したか
出さない 顧客・患者の情報や施術内容、名札・入館証・座席表、PC画面やホワイトボードの文字、未公表の人事や採用予定、個人の給与額、社員の家族や自宅周辺、通勤経路が特定できる映像 本人の同意があっても、第三者の情報が含まれる場合は出さない
見落としやすい点

危ないのは被写体より背景です。撮影前に机上の書類を裏返す、モニターを消す、ホワイトボードを消すの3点を撮影手順に組み込むと、編集段階での撮り直しを減らせます。社内の掲示物に社員名や個人の成績が書かれている例も多く、画角に入らない位置を事前に決めておきます。

顔出し同意書に入れる項目

社員の顔写真や動画は、特定の個人を識別できる情報として個人情報に当たります。個人情報保護委員会は、本人を判別できる写真について利用目的の通知または公表が必要であると示し、不特定多数の者へ提供する際は自主的に本人の同意を得るなどの取組が望ましいとしています(個人情報保護委員会FAQ)。採用SNSは不特定多数に向けた公開ですので、口頭だけで済ませず書面や社内フォームで記録を残す形が実務的です。

以下は同意書に入れる項目の例です。文面は自社の就業規則や法務の確認を経て確定してください。

項目 書き方の例
利用目的 当社の採用広報および会社紹介のため
掲載媒体 当社公式Instagram、TikTok、採用サイト、会社説明会資料
公開範囲 一般公開(誰でも閲覧・共有できる状態になることを含む)
掲載内容 顔・姿・音声・氏名(イニシャルのみも可)・所属部署・入社年
掲載期間 同意日から◯年、または在籍中に限る等を選択
二次利用 広告配信での使用、他媒体への転載、切り抜きの可否
撤回の方法 申し出先の部署と連絡手段、申し出から対応までの目安日数
撤回時の限界 既に第三者に保存・転載されたものは回収できない旨の説明
退職後の扱い 退職時に掲載を続けるか取り下げるかの初期設定
撮影時の確認 出演は任意であり、断っても評価に影響しないこと

とくに重要なのは最後の2つです。撤回の申し出先が決まっていないと、現場の上司で止まって担当者に届きません。撤回の受付窓口と対応期限を先に決めておくと、申し出が来てからの判断に迷わずに済みます。

三脚にスマートフォンを固定してオフィスで動画を撮影する様子
写真:Amar Preciado/Pexels

退職・異動が起きたときの投稿の扱い

採用SNSで最も相談が多いのがここです。辞めた社員が映る投稿を全部消すと、過去の積み上げが消えます。残し続けると本人から申し出が来ることがあります。あらかじめ3段階で判断基準を決めておきます。

  1. 出演者と投稿の対応表を作る
    運用開始時から、投稿日・URL・出演者名・同意書の有無・広告使用の有無を1行ずつ記録します。退職が決まってから探すと漏れます。
  2. 退職手続きのチェック項目に「SNS投稿の確認」を加える
    総務の退職手続きフローに組み込みます。本人への意向確認は、最終出社日までに行う時期を決めておきます。
  3. 3段階で扱いを決める
    ①広告素材としての配信は停止、②本人が取り下げを希望した投稿は非公開または削除、③本人の希望がなく会社紹介として残す意味がある投稿は掲載を継続、という形で基準を文書にします。
  4. アカウントと権限を回収する
    共同管理者の権限、撮影データの保存先、予約投稿の中身を確認します。個人のスマートフォンに素材が残っていないかも確認対象です。
  5. 固定投稿とプロフィールを見直す
    退職者が固定投稿やハイライトの先頭にいる状態は、応募者に古い情報として伝わります。差し替えの担当を決めておきます。

異動の場合は削除ではなく、説明の更新が中心になります。部署名や役職が変わった投稿は、キャプションの追記で現状と合わせます。

社員の個人アカウントに任せるときの線引き

個人アカウントでの発信は、会社が削除や修正を命じにくい点が前提になります。始めるなら、次の5つを書面で確認してから進めます。

  • 会社の指示で投稿するのか、本人の裁量で投稿するのか
  • 投稿にかける時間を労働時間として扱うのか、扱わないのか
  • プロフィールに社名を書くか、書く場合に「発言は個人の見解」と添えるか
  • 会社の非公開情報・顧客情報を扱わない範囲の具体例
  • 退職後にアカウントをどうするか(社名表記の削除など)

会社が業務として投稿を指示するなら、時間の扱いと評価への反映を先に決めます。評価に入れないまま依頼だけが増えると、担当者の負担が見えなくなります。役割分担の考え方は、SNS運用を社内の誰が担当すべきかの整理が参考になります。

採用投稿が募集情報になるときの表示ルール

SNSの投稿でも、労働者の募集を行う内容であれば職業安定法の対象になります。2022年10月1日施行の改正職業安定法により、求人情報や自社に関する情報について的確な表示が義務づけられ、虚偽の表示や誤解を生じさせる表示は禁止されています。あわせて、求人情報を正確かつ最新の内容に保つ措置を講じることが求められます。厚生労働省のリーフレットでは、対象となる手段としてウェブサイトやメッセージアプリなども挙げられています。

また、2024年4月1日施行の改正職業安定法施行規則により、募集時などに明示すべき労働条件として、従事すべき業務の変更の範囲、就業の場所の変更の範囲、有期労働契約を更新する場合の基準の3項目が追加されています。労働条件の明示は、原則として求職者等と最初に接触する時点までに行うこととされています。

実務では、短い動画に労働条件を書き切ることはできません。次の形で運用を設計すると、表示義務と発信の自由度を両立しやすくなります。

  • 条件の記載は求人ページに集約し、投稿からはプロフィールのリンク経由で1クリックで届くようにする
  • DMで応募の相談を受ける場合に備え、最初のやり取りで条件一式を案内する定型文と送付担当を決めておく
  • 募集が終了・変更になった投稿は、キャプションに終了の追記をするか固定表示から外す運用にする
  • 投稿に「◯年◯月時点の情報」と入れ、更新の責任者を1名決める
見落としやすい点

古い採用投稿は検索やおすすめ経由で後から見られます。半年前の「月給◯◯万円」の投稿が残っていると、現在の条件と食い違う表示になりかねません。四半期ごとに過去投稿を見直す日を、運用カレンダーに入れておきます。

立ち上げ前のチェックリストと、相談できること

ここまでの決め事を、着手前に確認できる形にまとめます。すべて埋まってから1本目を撮る必要はありませんが、社員が出演する投稿の前には上から7項目までを済ませておく形が安全策になります。

  • 発信者の型を①〜③から選び、理由を1行で書いた
  • 公開してよい情報と出さない情報の一覧を作り、現場に共有した
  • 撮影前の背景確認3点(書類・画面・掲示物)を手順書に入れた
  • 顔出し同意書の項目を決め、保管場所と管理担当を決めた
  • 同意撤回の受付窓口と、対応までの目安日数を決めた
  • 出演者と投稿の対応表のフォーマットを用意した
  • 退職手続きにSNS投稿の確認を組み込んだ
  • 募集条件の掲載先を求人ページに集約し、更新担当を決めた
  • 批判的なコメントが来たときの一次対応者と、返信可否の基準を決めた

最後の項目については、コメント対応と削除申請の初動を整理したSNSの誹謗中傷への対処手順を社内ルールのひな形として使えます。

当社は株式会社友竹ホールディングスとして、Instagram・TikTokの運用代行と、社内で運用を回せるようにする内製化支援(SODATSU)を行っています。ルールづくりの段階からの相談も受け付けています。媒体別の支援内容はInstagram運用代行のページとTikTok運用代行のページ、全体像は事業内容のページをご覧ください。社内の体制に合わせて進め方を決めたい場合は、お問い合わせページから現状をお知らせください。受付は平日10:00〜19:00です。

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