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動物病院のSNS運用|飼い主に届く発信内容

動物病院のSNS運用|飼い主に届く発信内容

動物病院のSNSで反応が続くのは、予防と季節の注意喚起、院内の人と設備、飼い方の基本の3本です。治療成績や「他院より優れている」という訴求は、獣医療法の広告規制に触れる可能性があります。この記事は、院長・事務長が診療の合間に回せる範囲で、何を出し、何を出さないかを決めるための手順をまとめました。

前提として、動物病院は医療法・医療広告ガイドラインの対象ではありません。獣医師法と獣医療法が適用されます。人の美容クリニックの記事をそのまま当てはめると、判断を誤ります。以下は2026年10月時点で公開されている法令・指針に基づく整理です。個別の表現の可否は、所管の都道府県(家畜保健衛生所・畜産主管課)への確認をおすすめします。

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獣医療法の広告規制で、SNSに書けること・書けないこと

獣医療法第17条は、獣医師または診療施設の業務に関する技能・療法・経歴の広告を原則として禁じています。例外は、専門科名、獣医師の学位または称号、そして獣医療法施行規則第24条で定められた事項です。

ここでいう「広告」は、農林水産省の指針で誘引性・特定性・認知性の3つをすべて満たすものとされています。診療施設のウェブサイトは原則として広告に該当しないと整理されていますが、指針は、ウェブサイト等であっても3要件をすべて満たせば広告制限の対象となり得ると示しています。つまり「SNSだから規制の外」とは考えないほうが安全側の判断です。とくに投稿に広告費をかけて配信する場合は、誘引性と認知性が強まります。

2024年4月1日施行の改正で変わった点

獣医療法施行規則第24条の改正(令和6年4月1日施行)により、技能・療法に関する事項でも、問合せ先/通常必要とされる診療内容/主なリスクおよび副作用等/費用をすべて併記することを条件に広告できるようになりました。ただし、他院と比較して優良である旨の広告と、実際より誇大な広告は引き続き認められません。

SNSの短い投稿でこの4点を漏れなく載せるのは現実的ではない場面が多くなります。実務では「4点を併記した自院サイトの詳細ページを用意し、SNSは存在を伝えてそこへ送る」という分け方が扱いやすい形です。

書き方 扱い SNSでの運用方針(例)
診療日・診療時間・予約の可否、休日夜間や往診の実施、入院設備や人員配置、支払い方法 技能・療法・経歴に当たらない情報として扱われる 通常投稿・ストーリーズで積極的に出す
専門科名(内科、整形外科、犬猫専門科など)、獣医学修士・獣医学博士などの学位 法第17条第1項の例外として広告可能 プロフィール欄と固定投稿に記載
CTやMRIなど医療機器を所有していること 機器が特定されない一般的名称であれば可能とされる 設備紹介の投稿で機器名の表示に注意
その機器を使った診断・治療が得意である、という訴求 技能・療法の広告に当たる。4点併記の条件を満たす必要がある SNS本文では避け、詳細ページへ誘導
「地域で一番」「どこよりも丁寧な手術」 比較優良広告として認められない 投稿前チェックで差し戻す
「〇〇の予防接種 3,500円」のような費用の単独表示 費用のみの広告は認められない 料金はサイトの併記ページに集約
見落としやすい点

広告規制とは別に、医薬品医療機器等法や景品表示法も関わります。動物用医薬品の販売名を出して効能をうたう、ワクチンのメーカー名を載せる、といった投稿は判断が難しくなります。迷う表現は投稿せず、院長と所管部署に確認する運用にしてください。

飼い主が見に来るテーマ別・投稿の型

飼い主がフォローを続ける理由は、宣伝ではなく「困ったときに思い出せる情報源」であることです。次の4分類で、投稿の役割を分けます。

分類 目的 投稿例(企画例) 目安の比率
予防・手続きの案内 来院時期の想起 狂犬病予防注射の登録手続きの流れ、健康診断の受付開始、休診日の告知 30%
季節の注意喚起 保存・共有される 暑い時期の散歩の時間帯、花火や雷の音が苦手な子の留守番、年末の誤食しやすい食品 25%
院内の人と設備 初診のハードルを下げる 受付から診察室までの動線、待合の猫専用スペース、スタッフの自己紹介 25%
飼い方の基本 新規の発見流入 キャリーに慣らす練習、爪切りの頻度の考え方、体重の測り方 20%

「院内の人と設備」は、他院と差がつきにくいと思われがちですが、初診の不安を下げる効果が期待できるテーマです。駐車場の入口、キャリーを置く台、診察室の広さ、待ち時間の過ごし方。来院前に知りたい情報は、技能・療法の広告には当たりにくく、作りやすい素材でもあります。

投稿前チェックリスト

  • 治療の効果や成績を示す表現が入っていないか
  • 他院との比較、最上級の言葉が入っていないか
  • 費用だけを単独で載せていないか
  • 動物用医薬品の販売名・メーカー名が映り込んでいないか
  • 飼い主と動物の掲載同意を書面で得ているか
  • 診断や治療方針に関わる内容を、獣医師以外の判断で書いていないか
  • カルテ、モニター、ホワイトボードなど他の患者情報が背景に写っていないか
診察台の犬を診る獣医師と付き添う飼い主の様子
写真:Mikhail Nilov/Pexels

症例写真とビフォーアフターの出し方

症例写真は、投稿する前に「広告規制」と「飼い主の同意」の2つを別々に確認します。どちらか一方では足りません。

規制の面

治療前後を並べて改善を示す投稿は、技能・療法の広告に当たると判断される余地があります。この形で出すなら、前述の4点併記の条件を満たすページとセットで設計し、投稿単体で効果を訴える構成は避けます。症例の紹介ではなく「どんな検査をどういう流れで行うか」という手順の説明に置き換えると、伝えたい内容を残しつつ表現のリスクを下げられます。

同意の面

人の医療機関と違い、動物病院では同意するのは患者本人ではなく飼い主です。飼い主は所有者であり、同時に家族として動物を見ています。「うちの子の傷の写真が宣伝に使われた」と受け取られると、治療そのものに不満がなくても関係が壊れます。口頭了解で済ませず、書面で範囲を決めてください。

  1. 同意書のひな形を1枚だけ作る
    掲載媒体(院内掲示/自院サイト/Instagram/TikTok)、写真か動画か、鳴き声や飼い主の声を含むか、を選択式にします。
  2. 表示する情報の範囲を選んでもらう
    動物の名前、犬種・猫種、年齢、病名の表示可否を個別にチェックできるようにします。
  3. 期間と取り下げの方法を書く
    掲載期間、申し出先、申し出から削除までの目安日数を明記します。
  4. 取り下げても完全には消えない旨を伝える
    第三者による保存や再投稿までは止められません。この説明を同意書に入れておくと、後からの行き違いを減らせます。
  5. 広告配信に使う可能性を分けて確認する
    通常投稿と、費用をかけて配信する広告では、届く範囲が変わります。別項目で同意を取ります。
  6. 原本の保管場所と担当を決める
    誰が保管し、投稿担当がどう参照するかまで決めておくと、担当交代時の取りこぼしを防げます。
見落としやすい点

亡くなった子の写真は、同意を得ていても扱いが特に難しいテーマです。追悼の投稿は、飼い主から申し出があった場合に限る、など院としての方針を先に決めておいてください。

年間発信カレンダーの企画例

下表は当社が作成した企画例です。実績の紹介ではありません。予防の時期は地域の気候や自治体の運用で変わります。月の割り当ては、担当獣医師の判断で入れ替えてください。

時期 手続き・予防の案内 季節の注意喚起
1〜2月 年始の診療開始日、健康診断の案内 寒い時期の室内環境、シニアの動きの変化
3〜4月 犬の登録と狂犬病予防注射の手続き(自治体の集合注射の日程は各自治体の告知を確認)、フィラリア検査の受付 散歩コースの草むら、新生活による環境変化
5〜6月 予防薬の継続投与の案内、去勢避妊の相談受付 梅雨時期の皮膚と耳、湿度管理
7〜8月 夏季の診療時間、お盆の休診と救急時の案内 暑い時間帯の散歩、車内での留守番、花火の音
9〜10月 秋の健康診断キャンペーン告知(費用は単独表示しない) 気温差、シニアの体重変化
11〜12月 年末年始の休診日と救急の連絡先、翌年の予防スケジュール 年末の食べ物の誤食、暖房器具のやけど

この表を先に埋めておくと、繁忙期に企画を考える時間がなくなっても投稿が止まりません。告知系は日付が決まっているため、3か月前に文面を作り置きできます。

急患で止まる前提の週次分担

動物病院の運用が止まる理由は、やる気ではなく予定が読めないことです。急患が入れば撮影も承認も飛びます。そこで「止まっても投稿は続く」状態を先に作ります。

3つの役割に分ける

役割 担当の例 週あたりの時間(目安) やること
決める人 院長 30分 月間テーマの確定、医学的内容の確認、公開可否の最終判断
つくる人 愛玩動物看護師・トリマー 60〜90分 撮影、素材のフォルダ保存、下書き作成
出す人 受付・事務 60分 予約投稿の設定、コメント・DMの一次対応、月次の数値記録

止まらないための3つのルール

  • 2週間分の投稿を常に予約済みにしておく(在庫がゼロになったら新規撮影を優先する)
  • 撮影は「15分枠を週2回」で固定し、埋まらなければその週は見送る
  • 院長の確認は週1回まとめて行い、確認が間に合わない投稿は翌週へ送る

DMで症状の相談が届く点も、先に決めておく必要があります。SNS上では診断や治療方針を答えないとルール化し、電話または来院予約へ案内する定型文を用意してください。誰が返しても同じ対応になることが、トラブルを減らす近道です。役割分担の決め方は、SNS運用を社内の誰が担当すべきかを整理した記事でも詳しく扱っています。

動物病院の待合室でキャリーに入って待つ猫
写真:Batuhan Küçükdemir/Pexels

来院予約と採用の導線は分ける

同じアカウントで飼い主と求職者の両方を狙うと、どちらにも届きにくくなります。分ける理由は3つあります。

  1. 見る人が違う
    飼い主は困りごとの解決を探し、求職者は働き方と人間関係を見ています。求める情報が重なりません。
  2. 規制上の整理が違う
    農林水産省の指針では、診療施設の職員募集に関する広告は、広告とみなされない事例として挙げられています。診療内容の訴求より表現の自由度があります。
  3. 指標が違う
    来院は予約数、採用は応募数で見ます。同一アカウントだと、どちらの成果か切り分けられません。

規模別の分け方

院の状況 構成 注意点
1院・スタッフ10名未満 1アカウント。採用情報はハイライトと固定投稿で分離 採用投稿は月1〜2本に抑え、飼い主向けの流れを崩さない
分院2〜3院 診療は分院ごと、採用は法人で1つ 分院アカウントのプロフィールから採用アカウントへ相互リンク
4院以上・新卒採用も行う 診療は分院ごと、採用はInstagramとTikTokで役割分担 動画は1本を複数媒体へ使い回し、制作負荷を増やさない

来院側のゴールは、プロフィールのリンクから予約ページに1タップで着くことです。初診の持ち物、駐車場、所要時間を固定投稿にまとめると、電話での問い合わせ対応時間も減らせます。採用側は、1日の流れ、研修体制、夜間対応の有無など、求職者が面接で必ず聞く内容を先に出します。

内製で始めるか、外注を挟むか

判断は「撮る人が院内にいるか」で分かれます。撮影できる人がいるなら内製で始め、企画と投稿前チェックだけ外部に預ける形が負担を抑えられます。撮る余力がないなら、最初の3か月だけ外注して型を作り、その後に院内へ移す進め方が現実的です。費用の比較軸は、撮影込みのSNS運用と内製撮影の費用比較にまとめています。

なお、人の医療機関と動物病院では、根拠となる法令も、同意を得る相手も異なります。美容クリニック向けの考え方と混同しないよう、医療広告ガイドラインを扱った記事とあわせて、どちらが自院に当てはまるかを確認してください。

この章の要点

最初に決めるのは、投稿テーマではなく「公開してよい範囲」と「誰が最終確認するか」です。ここが決まっていれば、担当者が変わっても運用は続きます。

株式会社友竹ホールディングスでは、Instagram運用代行とTikTok運用代行に加え、院内スタッフが自分たちで回せる状態をつくる内製化支援(SODATSU)を行っています。支援範囲は事業内容のページをご覧ください。投稿前チェック体制の設計や、採用アカウントの分離についてのご相談はお問い合わせフォームから承ります(受付時間:平日10:00〜19:00)。

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